2012年6月9日土曜日

日本妊娠高血圧学会


  
-1妊娠高血圧症候群はどのような病気ですか?

-1 妊娠20週以降に血圧が上昇(高血圧)、あるいは高血圧と尿にタンパク(蛋白尿)
がでる場合を妊娠高血圧症候群と言います。
さらに、次のように分類します。
・妊娠高血圧(高血圧のみ)
・妊娠高血圧腎症(高血圧+蛋白尿)
・加重型妊娠高血圧腎症(妊娠前からの高血圧+妊娠後蛋白尿)
・子癇(高血圧+けいれん)
妊娠中に出現するむくみ(浮腫)も前兆となることがあるので注意が必要です。蛋白尿のみの場合も同様に注意を払います。

-2妊娠高血圧症候群になるとどんな問題が起こりますか?

-2 お母さんと赤ちゃんの両方に(母児)に重大な影響を及ぼすことがあります。
血管が障害されて痙攣、視覚障害、脳出血などが起こります。
臓器が障害されて肝臓・腎臓障害,心不全などが起こります。
・胎児側
胎児側に十分な栄養や酸素が供給されないので,発育障害,胎児機能不全,胎児死亡などが起こります。

-3どのようにして妊娠高血圧症候群を診断しますか?

-3 ・血圧測定
定期的に妊婦健康診査を受け,毎回血圧測定を行ないます。高血圧の基準は最高血圧140mmHg以上,あるいは最低血圧90mmHg以上と一般の診断と同じです。また、妊婦は夕方から夜間に血圧が高くなる傾向があるので、できるだけ家庭血圧を測定し,測定値記録を診察時医師または助産師に提出することをお勧めします。
・検尿
健診時には必ず尿検査を行い,尿蛋白や尿糖の有無をチェックします。


睾丸の腫れや痛み
-4妊婦でなぜ高血圧がおこるのですか?

-4 病気の原因や病気のしくみを解明するために活発な研究が続けられていますが、いまだに決定的な説はありません。今のところ最も主なものは、妊娠高血圧症候群ではおかあさんから赤ちゃんへ酸素や栄養を渡している胎盤に十分な血液が流れていかないため、赤ちゃんへの十分な血液を流そうとお母さんの体から、血圧を上昇させる様々な物質が分泌され、高血圧が発症するというものです。

-5どんな人が妊娠高血圧症候群になりやすいのですか?

-5高血圧の家系の人、腎臓病になったことがある人、前の妊娠で妊娠高血圧症候群になった人、糖尿病や甲状腺の病気のある人、年齢が高い人や肥満の人、初めてのお産の人などです。妊娠したときにすでに血圧が高い人や血液が濃い人もなりやすいタイプです。

-6妊娠高血圧症候群を予防する方法がありますか?

-6妊娠高血圧症候群を予防する確定的なものはありませんが,
次のようなことが予防に役立つ可能性があります.
・妊娠中の体重増加を適正に保つ
妊娠前にやせていた方は9-12kg,普通の体型の方は
7-10kg,太っていた方は5-7kgを目安とします.
・バランスよい食事を摂る
妊娠中のカロリー必要量は,初期2000カロリー/日,中期2250カロリー/日,後期2450カロリー/日です.良質な蛋白質のほかに牛乳,乳製品,大豆類,緑黄色野菜,小魚,海草などカルシウムやビタミンを含んだ食品を適量摂取しましょう.
・塩分を控えめにする
妊娠中は塩分薄めの食事(食塩として1日10g/日以下)を摂りましょう.
・ストレスを避ける
交感神経が緊張すると血圧が上昇します.穏やかでゆったりとした生活を送りましょう.


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-7妊娠高血圧症候群はその後の生活習慣病と関係がありますか?

-7 妊娠高血圧症候群はその後の生活習慣病と関係があると言われています。お産後数十年経って、高血圧、脳血管障害、虚血性心疾患、糖尿病、高脂血症などのメタボリックシンドロームや腎疾患などを発症しやすいことが報告されています。したがって、出産後も食事、生活習慣などの健康管理には十分注意が必要です。

-8前回妊娠高血圧症候群と診断されました。今回の妊娠は大丈夫ですか?

-8妊娠高血圧症候群になりやすい要因はQ5に書かれていますが、前回妊娠高血圧症候群だった方もやはりその中に含まれるのです。
わが国の全妊婦さんのうち妊娠高血圧症候群にかかる割合は4%程度と言われていますが、初めてのお産の時に妊娠高血圧症候群だった方が今回の妊娠でまた妊娠高血圧症候群となってしまう確率は約50%程度と高くなります。前回妊娠高血圧症候群でなかった方に比べて約7倍発症の可能性が高まるという報告もあります。特に、前回妊娠30週よりも前に妊娠高血圧症候群になってしまった方や、週数にかかわらず重症の妊娠高血圧症候群と診断された方の場合には再発しやすいと言われていますので、今回の妊娠でも十分な注意が必要です。
その一方で、前回のお産で妊娠高血圧症候群がなかった方が妊娠した時には、今回妊娠高血圧症候群となる可能性はきわめて低くなります。 


自然なアクネ硬化
-9今回妊娠高血圧症候群と診断されました。赤ちゃんは大丈夫ですか?

-9妊娠高血圧症候群では、赤ちゃんが2500g未満で生まれたり(低出生体重児)、赤ちゃんが仮死状態で生まれたり(新生児仮死)、最悪の場合にはお母さんのおなかの中で赤ちゃんが亡くなったり(子宮内胎児死亡)してしまうことがあります。これらはみな、子宮から胎盤を通って赤ちゃんへ流れる血液の流れが悪くなることによって起こります。血液の中には酸素や栄養が含まれていますので、その流れが悪くなると子宮の中で赤ちゃんの発育が遅れたり(子宮内胎児発育遅延)、赤ちゃんに十分な酸素が行かなくなったり(胎児低酸素症)、羊水が少なくなったりして、上のような合併症が起こりやすくなるのです。
こうしたことを起こさないように、妊娠高血圧症候群と診断された場合には、超音波を使って、赤ちゃんの大きさを定期的に測定し、また必要に応じて赤ちゃんの動きや羊水の量が十分にあるかどうかなどを確認します。また分娩監視装置を使用して、赤ちゃんの心拍の変化などを観察します。時には、お腹の中で赤ちゃんの動く回数をお母さん自身にカウントしてもらうこともあります。
こうすることによって、お腹の中の赤ちゃんが元気であることを確認するのです。 

-10妊娠中毒症という病気を聞いたことがありますが、妊娠高血圧症候群と妊娠中毒症はどう違うのですか?

-10妊娠中毒症とは、2005年まで使われていた病名です。妊娠中毒症は、高血圧、蛋白尿、むくみ(浮腫)の三つの症状のうちどれか一つでもあれば、その診断となりました。しかし、妊娠中毒症の研究が進むにつれて、蛋白尿やむくみだけではお母さんや赤ちゃんに大きな影響が無く、血圧が高くなることが病気の本当の問題だということがわかってきました。そこで、高血圧があって、はじめて妊娠高血圧症候群と診断することになりました。


このように病気の定義が変わりましたので、以前は蛋白尿やむくみだけの方でも妊娠中毒症といわれましたが、現在では妊娠高血圧症候群とは診断されません。
-11正常の妊婦の血圧はどのように変化しますか?

-11正常の妊婦の血圧は妊娠初期から中期にかけて低くなり、その後お産まで上昇します。そのため、妊娠初期から中期に血圧が正常範囲内であっても高めの場合は、妊娠高血圧症候群となる危険性がありますので中期以降の血圧の変化に十分注意が必要と考えられます。

-12浮腫とは何ですか?

-12女性の中には、靴下の跡が残ったり、夕方靴がきつくなったりと、足のむくみを経験した人は多いと思います。このようなむくみの事を浮腫といいます。血管の中の水分が組織にしみ出して、たまってしまった状態です。
妊娠したお母さんの体では、赤ちゃんの成長・発育のために、お母さん自身の血液の流れを良くしようと体の水分量が増えると考えられています。また、妊娠と関連した女性ホルモンは、血管の壁の性質を変えて、血液中の水分を血管の外側へしみ出しやすくします。このため、妊娠した女性では浮腫が生じやすくなります。さらに、妊娠後期の大きくなった子宮は下半身からの血液が心臓に戻るのを妨げるので、特に足でむくみがおこりやすいのです。
現在、妊娠後期のむくみは、病気ではないと考えられています。しかし、妊娠28週未満の全身のむくみには、腎臓や心臓の病気などが隠れている可能性があるので、注意が必要です。

-13母親が妊娠中毒症でした。遺伝することはありますか?

-13血の繋がった家族に妊娠高血圧症候群があった場合、そうでない方に比べて発症の可能性が高いと言われていますが、遺伝だけの影響はそれほど大きくないと考えられています。妊娠高血圧症候群の発症には、遺伝的な要素だけでなく生活環境や妊娠の状態等が大きく影響するからです。家族では体質だけでなく食事習慣などの生活環境も似ていますので、ご家族に妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の方がいらした場合には、食事や生活習慣に気をつけてください。


-14.普段低血圧であれば、妊娠高血圧症候群になりにくいのでしょうか?

-14上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上で高血圧と診断されます。妊娠していない時の血圧が、上が130?139mmHg、下が80?89mmHgの範囲にある、いわゆる血圧が高めの方では、妊娠高血圧症候群になりやすいことが知られています。一方、普段の血圧が低い方(上が100mmHg未満、下が60mmHg未満)での発症率は数%ということですので、普段低血圧であればなりにくいといえます。しかし、妊娠高血圧症候群にならないということではありませんので、食事やストレスなどには気をつけてください。

<参考文献>
@「妊娠中毒症から妊娠高血圧症候群へー過去から未来へ
(編/日本妊娠高血圧学会 発行/還ジカルビュー社)
A「妊娠高血圧症候群のすべて」
(著/日本妊娠高血圧学会理事長 江口勝人 発行/還ディカ出版)
B「妊娠高血圧症候群(PIH)管理ガイドライン2009」
((編/日本妊娠高血圧学会 発行/還ジカルビュー社)



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