▼ 結節性甲状腺腫(甲状腺のしこり、おでき)とは?
結節性甲状腺腫とは、甲状腺の内に「しこり」や「おでき」ができる病気です。結節性甲状腺腫には良性と悪性があります。 健康な人でも詳しく調べれば、10人中約2〜3人の割合で甲状腺内の「しこり」が見つかります。 そのほとんどは良性で大部分の方は心配ありませんが、中には悪性の甲状腺癌がありますので検査が必要です。 良性と思われた腫瘍でも、後に癌とわかることもありますので定期検査が必要です。
結節性甲状腺腫の典型例
▼ 甲状腺の良性腫瘍
甲状腺の良性腫瘍には、以下のようなものがあります。
- 甲状腺のう胞
- 甲状腺濾胞腺腫
- 腺腫様甲状腺腫
- 機能性結節
1. 甲状腺のう胞
特徴
甲状腺に袋状のものができ、中には水のような液体が溜まっているものをいいます。小さいと外から触ってもわかりませんが、大きくなると「しこり」として触ることができます。ほとんどは痛みなどの症状はありませんが、まれに急に大きくなって痛みを感じることがあります。生命にかかわる心配はありませんので通常経過を観ますが、美容上の理由で注射針と注射器で中の液状成分を吸い出したり、アルコールで固めたりします。
診断
超音波検査で診断できます。必要に応じて細胞検査を行います。
治療
注射針と注射器で中の液状成分を吸い出します。 ほとんどの場合1回〜数回繰り返すことにより、小さくなったまま液体が溜まらなくなり完治します。 何回吸い出しても溜まる場合はエタノール注入療法(アルコールで固める治療)も行います。 のう胞が大きくエタノール注入療法も効かない場合は、手術療法を行います。 嚢胞の中に癌細胞があった場合は手術療法が必要です。
中等度のにきびを治す
2. 甲状腺濾胞腺腫
特徴
甲状腺の中の濾胞細胞という甲状腺ホルモンを作っている細胞が腫瘍となったものですが、良性腫瘍です。 「しこり」以外にほとんど症状がありません。 カプセルという皮膜に包まれながらゆっくりと発育していきます。
診断
血液検査、超音波検査、細胞検査などを行います。細胞検査では悪性の甲状腺濾胞癌との区別が難しいことがあります。 癌でないかどうかは、細胞検査以外に触診と超音波検査が大切です。
治療
良性腫瘍ですので手術は行わずに経過を観察するのが基本です。年に1〜2回、超音波検査と血液検査を行います。 必要に応じて細胞診も行うこともあります。 濾胞腺腫が大きくなるにはTSH(甲状腺刺激ホルモン)が関係していて、甲状腺ホルモンを投与して自分のTSHを下げることで、腫瘍が縮小することがあります。約2〜3割の患者さんで効果があるといわれています。 細胞検査で悪性を診断されなくても以下のような場合には手術を行います。
- 腫瘍が大きく(4cm以上とされます)硬い場合
- 大きくなるスピードが速い場合
- 腫瘍が大きく、気管や食道を圧迫する場合
- 腫瘍が甲状腺ホルモンをつくっている場合
- 本人が手術を希望する場合
3. 腺腫様甲状腺腫
特徴
「腺腫様」とは「腫瘍のような」という意味で、腫瘍のようにみえるが腫瘍ではない甲状腺の「しこり」のことです。甲状腺の中の濾胞細胞という甲状腺ホルモンを作っている細胞が、TSH(甲状腺刺激ホルモン)の刺激を受けて増えた(過形成といいます)ものです。1個の場合もありますが、多くは甲状腺全体に複数の「しこり」ができて甲状腺が大きく(甲状腺腫)なります。「しこり」以外に症状はほとんどありません。
診断
血液検査、超音波検査、細胞検査などを行います。 超音波検査で「しこり」がたくさん見られた場合はこの病気を疑います。
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治療
良性腫瘍ですので、手術は行わずに経過を観察するのが基本です。年に1〜2回、超音波検査と血液検査を行います。必要に応じて細胞診も行うこともあります。 TSH抑制療法(甲状腺ホルモンを投与して自分のTSHを下げる治療法)も行われることもありますが、効果はあまり期待できません。 基本的には経過を観察しますが、以下のような場合手術を行います。
- 大きくて、圧迫症状がある場合
- 癌が疑われる場合
- 甲状腺ホルモンをつくっている場合
- 本人が手術を希望する場合
4. 機能性結節
特徴
濾胞腺腫や腺腫様甲状腺腫は、甲状腺ホルモンを作っている濾胞細胞が腫瘍になったり増えたりしてできた「しこり」です。これらの「しこり」の中に甲状腺ホルモンをつくるものがあり、機能性甲状腺腫と呼ばれます。「しこり」が1個の場合、Plammer病や中毒性単結節性甲状腺腫とも呼ばれ、「しこり」が複数の場合は中毒性多単結節性甲状腺腫とも呼ばれます。血液中の甲状腺ホルモンは多くなりますが、一般的に軽症です。
診断
血液検査で甲状腺ホルモン(フリーT3、フリーT4)が増えていて、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が下がっています。 甲状腺シンチ検査で、甲状腺ホルモンを作っている部位が強く写し出されます。 超音波検査、細胞検査などを行います。
治療
一般的に手術が勧められます。手術により甲状腺ホルモンをつくっている「しこり」を切除します。 場合によっては、放射性ヨード内用療法や抗甲状腺薬で甲状腺ホルモンを下げる治療も行われます。
▼ 甲状腺の悪性腫瘍(甲状腺癌)
甲状腺に起こる癌はほとんどの場合はゆっくり進行していくため、治りやすい癌です。ほとんどの甲状腺癌は「しこり」以外の症状は乏しく、この「しこり」が診断の手がかりになります。まれに痛み、飲み込みにくい、声がかすれるなどの症状がでることがあります。
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甲状腺癌には
があります。
乳頭癌、濾胞癌と髄様癌は元の甲状腺細胞の特徴をのこしているため分化癌(ぶんかがん)と呼ばれます。
一方、未分化癌は元の甲状腺細胞の特徴に乏しく、進行が早くてたちの悪い癌です。 甲状腺にできるしこりのうち約20%が癌と推定されています。女性が4−5倍程度多くかかります。
乳頭癌
甲状腺癌のなかで最も多く、80%以上を占めます。 20・30歳代の方でも発見されることありますので、若いから大丈夫とは限りません。 「しこり」があるだけで他に症状はほとんどの場合ありません。よほど大きくなると気管を圧迫して息苦しくなる、神経を侵して声がかすれる、ものが飲み込みにくい、といった症状が現れることがあります。
進行は非常に遅くおとなしい癌です。中には数年前から「しこり」に気づいていたが放置していた患者様が、手術して完全に治ってしまうことも珍しくありません。 遠くの肺や骨に転移するより、甲状腺の周りのリンパ節に転移することが多いです。甲状腺の「しこり」より頚のリンパ節の腫れで気づく人もいます。 しかしリンパ節に転移しても、きっちり手術してしまえば90%近い患者様が治ってしまいます。極めてよく治る癌です。 運悪く手術後再発してもいろんな治療法があります。癌を治しきれなくても何十年も元気で暮らしてみえる方もみえます。
濾胞癌
乳頭癌に次いで多い癌で、甲状腺がんの8%ほどを占めています。 乳頭癌と同様におとなしいがんで、「しこり」以外には症状がない場合がほとんどです。 この癌は、頚の周りのリンパ節よりも、肺や骨など遠いところに転移することが多いです。 進行が遅く早期に治療をすれば、治る率はかなり高く、80%近い患者様が治ってしまいます。 良性の「濾胞腺腫」と思われた「しこり」から出てくることもあり、細胞検査では診断が困難なことが多い癌です。
髄様癌
甲状腺癌の1〜2%とまれな癌です。 甲状腺の中のカルシトニンというホルモンを作る細胞から出てきます。このカルシトニンとCEAという物質が血液で上がります。 この癌の特徴は、1/3は遺伝することがわかっています。残り2/3は遺伝とは関係がありません。 RETという癌遺伝子が発見されていて、この癌遺伝子を持つ方は早めに甲状腺を取ってしまう手術を行います。 この癌のなかには、副腎や副甲状腺などほかのホルモンの病気を合併することがあり、多発性内分泌腺腫瘍症(MEN)と呼ばれています。これも遺伝性の病気です。
未分化癌
甲状腺癌の1%ぐらいとまれな癌ですが、きわめてたちの悪い癌です。 若い人には少なく高齢者に多いです。 診断された時には、ほとんどの場合は遠くに転移していることが多く、手術ができないまま1年以内にほとんどの方が亡くなります。
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