2012年5月5日土曜日

4.肩こりと頭痛 [内科から見た肩こり] | 大人の病気・症状 - Dr.みやけの家庭の医学


1)頭痛について

頭痛の原因はいろいろありますが、ふだん頭痛の経験のない人に急に起こってきた急性頭痛とふだんから頭痛を繰り返す慢性頭痛とに分けて考えると分かりやすいでしょう。

急に起こってきた急性頭痛には、1)くも膜下出血や脳出血、2)比較的無症状に経過した脳腫瘍など、3)劇症型の脳炎・髄膜炎、などが考えられますが、いずれの場合も速やかな治療が必要となります。片頭痛や群発頭痛も急に頭痛が起こってきますが、今までにも同様の頭痛を経験したことのある場合がほとんどです。今までに経験したことがないような頭痛が急に起こった場合は、速やかに専門医の診断を受ける必要があります。

繰り返して起こる慢性頭痛の原因には、1)緊張型頭痛、2)片頭痛、3)三叉神経痛、4)脳腫瘍や脳血管の病気 などが考えられます。慢性頭痛は心配ないと決めつけていると、4)のような思わぬ病気が原因のことがあります。慢性頭痛の場合、一度は脳CTか脳MRIなどの検査を受けておく必要があります。

しかし慢性頭痛を訴える患者の90〜99%は緊張型頭痛か片頭痛のいずれかです。さらにこれら2つの慢性頭痛のうち、約80%は緊張型頭痛といわれるものです。緊張型頭痛はここで問題にする肩こりと関係深いものです。片頭痛との区別としては、片頭痛は発作的に激しい頭痛が急に起こり、発作の間は体を動かすことも辛くなります。激しい頭痛が半日から二日くらい持続すると、うそのように頭痛は消失します。

これに対して緊張型頭痛では、頭全体や後頭部、頚すじが重くなったりしめつけられるように、良くなったり悪くなったりしながら数日以上痛むことがあります。頭痛は朝起床時から起こることもあれば、夕方にかけて疲れがたまってくると起こる場合もあります。

一般に血管が脈打つようにズキン・ズキンする頭痛は血管性頭痛ともいわれ、片頭痛の特徴とされています。しかし肩こりの強い人にもズキン・ズキンと脈打つ血管性頭痛が起こることがしばしば経験されます。したがって肩こりによる頭痛と片頭痛を明確に区別できないケースもときに経験されます。血管性頭痛と緊張型頭痛の両方の因子を持ち合わせた混合型頭痛という考え方も存在しますが、実際の肩こりによる頭痛の多くは混合型頭痛の性質を持っていると思われます。


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血管性頭痛=片頭痛といえないのは、二日酔いやかぜなどで起こるズキン・ズキンとする血管性頭痛が片頭痛でないことからも明らかです。最近の知見によれば、片頭痛は遺伝的な背景を持ちながら、血小板から放出されるセロトニンという物質が頭痛の発生に深く関与していることが明らかになっています。

2)肩こり頭痛とは

筋肉の緊張(こり)が原因で起こる頭痛をここでは便宜上、「肩こり頭痛」と呼ぶことにします。肩こり頭痛には首すじや頭部の筋肉の緊張(こり)が深く関係しています(緊張型頭痛)が、血管性頭痛や神経圧迫による症候性神経痛も関与することになり、複雑な痛みを感じることになります。

(イラスト1)(イラスト2)

すなわち、「肩こり頭痛=緊張型頭痛+血管性頭痛+症候性神経痛」と考えることができます。今まで「肩こり頭痛=緊張型頭痛」と考えられていましたが、それでは肩こりによる頭痛の際のズキンズキンする痛みや目の奥の痛み、後頭部の電気の走るような痛みの説明が困難です。

「肩こり頭痛」は3つの成分からできていると述べましたが、もう少し詳しく考えらていきましょう。

A.緊張型頭痛

その1は、筋肉の緊張(こり)そのものからくるもので、首すじや頭がしめつけられるような鈍痛や不快感を感じます。このような痛みが「緊張型頭痛」といわれるものです。典型的な緊張型頭痛は、きゅうくつな帽子をかぶったときのように頭全体がしめつけらるように鈍く重く痛みます。首すじがこると、首すじから後頭部にかけてしめつけられるように痛みます。筋肉の緊張(こり)による不快感や痛みが、血液の循環不全や神経反射を介して肩こりの悪循環を生じることはすでに述べました(1.肩こりに必要な知識−5)筋緊張の発生メカニズム)。

こうして緊張型頭痛は一日の中でも悪くなったり軽くなったりしながら何日も続くことになります。頭や首すじがしめつかられるように重くだるくなると、ふわふわしためまいや吐き気を生じることになります。


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B.血管性頭痛

その2は、こめかみがズキンズキンと脈打つように痛む血管性頭痛です。血管性頭痛は頭皮の動脈(外頚動脈の枝)が拡張して痛くなるわけです。人間の頭皮は一皮むけば血管だらけです。ここには交感神経(自律神経の一つ)が走っていて、ふだんは収縮させるように働きます。この交感神経が一時的に麻痺すると、血管が拡張し、頭皮の一部分がズキンズキンと脈打つように痛くなります。最近は、血小板から放出されるセロトニンなどの物質が、血管の収縮→拡張に深く関係していると考えられています。 

C.症候性神経痛

(イラスト3)
肩こりの強い人が、片一方の目の奥に突き刺されるような強い痛みを感じることがあります。ひどくなると眼球が飛び出すのではないかと思うほど強く痛みます。この原因としては三叉神経第1枝(眼神経)や三叉神経第2枝(上顎神経)から分かれた神経が眼窩(眼のくぼみ)の上下を走っていて、それらの神経が眼輪筋の収縮によって刺激されるためと考えられます(症候性三叉神経痛)。

肩こりの強い人は目の奥の痛みまではいかなくても、目の疲れ、いつも眠たい感じ、目頭が重いと訴えることがしばしばあります。これらの症状は目の周囲を走っている眼輪筋そのものの緊張(こり)と関係深いと考えられます。

また左右どちらか一方の後頭部に一瞬ビリッと電気が走るような痛み(後頭神経痛)を生じることがあります。後頭部には第二頚髄から出た大後頭神経が走っています。頭髪の生え際のところで首すじのこりが原因で神経が刺激されると、神経痛を生じたり頭髪をさわるとビリビリする感じを生じます。

神経痛ではありませんが、肩こりが強いとき、歯が浮いたように感じることがあります。これも下あごから歯肉にかけて走る三叉神経第3枝(下顎神経)の枝が刺激される結果と考えられます。神経がしびれると浮いたように感じるのは、長時間正座した後に足がしびれてむくむように感じることからも推測できます。

本来の三叉神経痛は肩こりで起こるものとは異なるため、混同しないように注意しなければなりません。本来の三叉神経痛では顔を洗ったり、ものを咬んだり冷たい風に吹かれた時に、発作的に数秒間から数分間、電気が走るような激烈な痛みを生じるものです。三叉神経痛に対して最近では脳外科的な治療の行われることがあります。


頭痛の救済ウィキペディア

3)眼精疲労との関係

長時間パソコンの作業に携わる人に、何ともたとえないような眼の疲れを起こすことがあります。眼精疲労と呼ばれますが、これもまた慢性的な肩こりと深く関係しています。眼精疲労は単に仕事のし過ぎと片づけられがちですが、症状が進むと頭痛や吐き気、眼の痛み、全身倦怠感などのいわゆる「肩こり症候群」の原因となり得ます。

眼精疲労は長時間のデスクワークにより眼と首すじ、肩周辺に筋肉疲労が蓄積されたところに、ディスプレーの設定や姿勢、室内の作業環境の悪化(空気の汚染や乾燥)が原因で「ドライアイ」やストレスが重なることによって起こります。

眼精疲労がふつうの疲労と違うのは、症状を訴える人の多くが強い精神的ストレスを感じている点です。これは仕事上のストレスの他に、パソコンを使う時に常に高い集中力とミスを起こしてはならないという警戒心が働いているためと考えられます。いくら休養をとってもあまり効果がなく、正しい治療や養生を行わないと深いな症状がなかなか回復しないことも特徴の一つです。眼精疲労は慢性的な肩こり症候群の原因となる疲労病と言えそうです。

4)頭痛と高血圧、頭痛と脳卒中

内科を訪れる多くの方が、肩こりが原因の緊張型頭痛を高血圧が原因ではないかと心配されます。実際、頭や首すじが重い、ふわふわするなどの肩こり症候群の時に、血圧を測ってみると上がっていることがしばしばみられ、倒れないかとびっくりして受診されます。特に更年期前後の女性でこのようなことが多くみられます。


多くの循環器専門医は、ふつう高血圧は自覚症状を起こしにくいものと考えています。高血圧が原因で頭重感を起こしたと考えるよりも、頭重感が続いたため不安感が強くなり、結果として血圧が上がったと考える方がよい場合があります。更年期障害で苦しむ中年女性の高血圧にこのようなことがしばしばみられます。中年女性の高血圧の治療が必要ないと言っているわけではありません。むしろこうしたきっかけで高血圧が発見できたのなら幸運と考えるべきでしょう。更年期障害や肩こり症候群が軽くなってくると、血圧も安定して薬が不要になることもしばしば経験されます。外来だけの血圧測定では回数も少なく、不安定なことが多く、高血圧と診断するためには自宅や職場でくり� ��して血圧を測定する必要があります。

肩こり症候群の頭痛や頭重感を脳卒中の前ぶれではないかと心配することがあります。脳卒中には血管が血栓でつまる脳血栓(脳梗塞)と脳出血に分けられます。脳血栓で頭痛を起こすことはまずありません。脳血栓は脳の一部に梗塞(壊死)を起こすため、その部に応じた運動麻痺などの神経障害を引き起こします。脳組織そのものには痛みの神経はないために、頭痛や頭重感を感じることはあり得ないことになります。ただし梗塞巣が広いと脳浮腫を起こし、頭痛や意識障害を起こすことになります。この場合、運動麻痺や意識障害が全面に出てくるため診断は容易です。

脳に関係した痛みの神経は、脳を包む膜や血管周囲に分布しています。したがって脳出血やくも膜下出血などで、脳膜が刺激されると激しい痛みを自覚することになります。脳出血の中でも脳内に出血した場合は痛みを起こすことは少なく、脳外に出血した場合に頭痛を起こすことになります。脳出血は発症時に重症になることが多く、歩いて外来受診というわけにはいきません。比較的軽い脳内出血は軽い神経症状で受診されるため、脳血栓との区別は困難で、MRIやCTを撮影してみるまで分かりません。


結論的にいうと、慢性的な頭痛や頭重感で脳血栓や脳梗塞の可能性は少ないといえます。脳出血には注意が必要ですが、神経学的に異常がなく、年齢的に慢性硬膜下出血が考えにくければ(高齢者に多くみられます)、脳出血も考えにくいことになります。突然起こった激しい頭痛に対しては、くも膜下出血を疑う必要があります。最近は比較的容易にMRIやCTの検査ができるため、急に起こった頭痛に対しては、これらの検査を受ける必要があります。



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