2012年5月14日月曜日

ドクター江部の糖尿病徒然日記  1型糖尿病


おはようございます。

今日は、これから札幌に出かけます。

医師20名が参加されているクリニカルサイエンス談話会で、糖質制限食のお話しをさせていただきます。
帰京したらまた報告いたします。

さて今回は、1型糖尿病の仙台のきょんさんから、「糖質制限食で血糖値の乱高下が改善」という嬉しいメールをいただきました。


"腕の痛み"と "腕の震え"

【11/03/23 仙台のきょん
悲しきSPIDDM
初めてコメントさせて頂きます。仙台在住の者ですが 仕事で関東にたまたま出ており私はこうして無事に過ごしております。お陰様で 両親 親族も無事で 皆様のあったかい支援のお陰で 元の生活に戻りつつあるそうです。ホントにありがとうございます。そして今日 江部先生に診察して頂きました!まずまず合格点(笑)だったので 安心しました。わたしは44歳で 発症し すぐインスリン導入を開始でしたが、同時に痩せ形もあるのか、たった一単位でもBSのジェットコースターが始まり 毎日ぐるぐる眩暈。 体重はどんどん減り 食べる時も船酔い状態で 吐き気との闘い!でも その時の代謝科のDrはインスリンを沢山うって 沢山ご飯をたべろ!と言われ 私の体より データ重視で 腑に落ちない事だらけでした。体重が減る事は代謝異常だからじゃないのか?と聞いても 精神的なものとしてかたずけられ、 がっかりでした。毎日死ぬ思いで仕事に行き ぐったり帰り 真面目に こんな体ならいらないと思いました。そんな時 江部先生の本に出逢い 同時に東北では ただ お一人だと思いますが 糖質制限を薦めて下さった先生との 奇跡(笑)の出逢いが 重なり私は生きていく道を与えて頂きました。今では 体重もぐんぐん増え ひどい眩暈もなくなり 体力も少しずつついてきています。私のお年頃は女性ホンルモン的にも 微妙で プレ更年期の方もいらっしゃると思います。それが 重なると沢山の症状を抱え うつになってるとも 聞きます。私も もしあのまま スパイク症状を 抱えていたら 今 こうしてはいられなかったでしょう。悩みを抱えていらっしゃる ミドル シニア世代の皆様に 是非 私の体験をお伝えし 江部先生にご相談する勇気を持って頂きたいです!必ず 納得のいく答えが待っていると思います。 特に 女性に多いそうなので 漢方と併用すると良い感じがします。
今 高雄病院で買ってきた 大豆クッキー食べてます(^^) おいしいです(^^)v】

仙台のきょん さん。
コメントありがとうございます。京都の高雄病院への来院、お疲れ様でした。

東日本大地震の未曾有の災害の中、ご両親・ご親族ご無事で良かったです。


手術ヘルプをいびき治す

犠牲者の方々へのお悔やみ、負傷者及び被災者の方々へのお見舞いを申しあげますと共に、現地の復興・復旧が少しでも軌道に乗ればと願っています。

きょんさんは、「緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)」で、経過から見て既に内因性のインスリンが一定ていど減少している状態と思います。長時間作用型と毎食前の超速効型(或いは速効型)のインスリン注射で、強化療法を実践しておられます。

糖質制限食実践で、現在は体重も回復され、体力もついてきて、コントロール良好レベルなので一安心です。

糖質制限食に理解のある医師との出会い、とてもラッキーであり嬉しいことでしたね。

インスリン注射は1型糖尿病患者さんに必要不可欠なもので� ��が、注射量は少なくてすむほど人体の代謝には優しいです。
また、インスリンの注射量が少なくてすむと、低血糖になりにくいのも利点です。

「1型糖尿病は、血糖値の乱高下があり、コントロールが困難である。」というのが、日本の常識なのですが、これはカロリー計算をして、糖質の摂取量の計算をしないことからくる弊害です。

1gの糖質が体重64kgの1型糖尿人の血糖値を約5mg上昇させます。炊いた白ご飯茶碗1杯150g(約250キロカロリー)には55.3gの糖質が含まれており、血糖値をピーク276mg上昇させます。体重32kgの1型糖尿病の小児なら約10mg上昇という計算になります。

一方、サーロインステーキ200g(約1000キロカロリー)には、糖質含有量は1gもありません。タンパク質は約46g含まれています。

2� ��糖尿人の場合、タンパク質は計算しなくていいのですが、バーンスタイン医師によれば1型糖尿人の場合、1gのタンパク質が血糖値を0.93mg上昇させます。

従って、サーロインステーキ200g(約1000キロカロリー)を1型糖尿人が食べたら、糖質分の上昇はほとんどありませんが、タンパク質分が約43mg血糖値を上昇させる計算です。


妊娠高血圧症の兆候

1型糖尿人は、余裕があるときは、タンパク質の計算もするとより正確に食後血糖値上昇の予測ができます。でも面倒くさいときは、糖質の計算だけでいいです。糖質の計算だけでも血糖値の乱高下は、ほぼ防ぐことができます。

なお、タンパク質が1型糖尿病の血糖値をどのていど上昇させるかは、今後の検討の余地があるところで、確定ではありませんので・・・。

一方、上述のご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算では食後血糖値の上昇は全く予測不能です。

そのため、従来の糖尿病食(カロリー制限が主)を摂取してインスリン注射をしている場合、低血糖と高血糖の繰り返しでジェットコースターのようになってしまいます。

きょんさんも、かつてカロリー計算主体でインスリン注射をしていた時は、血糖値の乱高下が生じて、めまい・嘔気・体重減少などが出現し生活の質が低下していたのだと思います。

ADA(米国糖尿病協会)の2008年度実施臨床勧告で「糖質のモニタリングは血糖管理の鍵となる」とgradeAで推奨し、「減量が望まれる糖尿病患者には低カロリー食、もしくは低炭水化物食によるダイエットが推奨される」と低糖質食(糖質制限食)を支持する見解が初めてだされました。

1型糖尿病患者さんに最適なのは糖質制限食ですが、それが困難な状況ならせめて糖質管理食を行えば、少なくとも血糖値の乱高下はなくなると思います。

ちなみに米国では、1型糖尿病患者さんには、糖質管理食はごく一般的に推奨されています。日本では 、残念ながら糖尿病学会のガイドライン(2010)において、糖質管理食でさえも見事に無視されています。

ただここ、数年一部の糖尿病専門医は、1型糖尿病に糖質管理食を積極的に導入されており、とても好ましいことと思います。成人と異なり、小児の1型糖尿病では、糖質管理食を取り入れている医療機関は結構多いと思います。

江部康二

☆☆☆参考

<糖質管理食と糖質制限食>

三大栄養素である、糖質・脂質・タンパク質のうち、血糖値を急峻に上昇させるのは糖質だけです。これは、カロリーとは無関係の、各栄養素の生理学的特質です。


このことに注目して、糖質摂取を制限して血糖コントロールするのが、高雄病院で推奨する「糖質制限食(carbohydrate restriction)」です。

一方、糖質だけが血糖値を上昇させることを前提に、一回の食事の糖質摂取量を計算して、血糖コントロールをめざすのが糖質管理食(carbohydrate counting)で、欧米では定着している食事療法です。

これには、1993年に発表された米国の1型糖尿病研究・DCCTにおいて、糖質管理食が成功を収めたことが、大きく関係しています。

また、1999年度ミス・アメリカのニコール・ジョンソンさん(1型糖尿病)の食事療法が糖質管理食であり、本も書かれたことも欧米での普及に役立ちました。

日本では、欧米では一般的な糖質管理食もそれほど普及していないのが現状です。しかし、2005年の日本糖尿病学会総会で、米国から糖質管理食の専門医が招聘されてシンポジウムが開催された後、徐々に糖質管理食を導入する糖尿病専門医療機関が増えてきています。

また、2006年3月に「かんたんカーボカウント」(医薬ジャーナル)という糖質管理食の本 が、大阪市大の小児科グループにより出版されました。

2008年1月の米国糖尿病協会(ADA)の栄養勧告では、「炭水化物をモニタリングすることは、炭水化物計算にしろ、炭水化物交換にしろ、経験に基づく評価にしろ、血糖コントロールを達成するための鍵となる戦略である。」と、炭水化物(糖質)を日常的に継続的に点検することを、強く推奨しています。この中の、炭水化物を計算する方法が、糖質管理食です。

糖質管理食は、基本的に3食とも主食(糖質)を摂取することを前提に、その糖質の一回の摂取量を計算します。血糖値を上昇させるのはほとんど糖質だけなので、例えば血糖コントロールに必要なインスリンの量を決めるのにはとても役に立ちます。

糖尿病というと、甘いもの(砂糖)がよく� ��いと誰でも思いがちですが、実は、特に砂糖だけが、血糖コントロールに悪影響を与えるという事実はありません。


「ご飯もパンもせんべいもうどんもラーメンもケーキも砂糖も、その中に含まれている糖質の量に比例して、血糖値を上昇させる」ということが生理学的事実です。

糖質管理食は、糖質だけをグラム計算するシンプルな方法です。従来のカロリー制限優先の糖尿病食に比し、カロリー計算や食品交換表は不要なので、楽に実践できると思います。

いつも述べてますように、1gの糖質が2型糖尿病の人の血糖値を約3mg、1型糖尿病の人の血糖値を約5g上昇させます。

「糖質→血糖値上昇」というシンプルな事柄に着目した糖尿病の食事療法という意味では、欧米の「糖質管理食」と高雄病院の「糖質制限食」は親戚筋といえます。

「糖質管理食」という考え方をさら に発展させ、3食とも主食を摂取しなくても良いと徹底したのが、高雄病院の「糖質制限食」という見方もできます。

1型糖尿病、2型糖尿病でもインスリン注射をしている糖尿人は、主治医とよく相談されて、糖質制限食が無理なら、せめて糖質管理食を実践されると、血糖値の乱高下がなくなり、コントロールしやすくなりますよ。



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